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まい・エピソード: ストレッチャー

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19歳。周りの人がバタバタと逝ってしまった。。
その日は突然だ。看護師さんがいつも部屋に来る時間に来なくなる。いつもは持ってこない、段ボールが置いてある。いつもと微妙に違う空気感。
Aがいなくなったときもそうだった。
夕方。僕のベッドの向かいのAが、具合が悪そうに、看護師さんに聞こえないくらいの小さい声で、「看護師さん来てー」と呼んでいた。ちょうど、夕食後のおやつを食べた後だ。

「どうしたー?」「インターホン押せるかー」ってきくと、「逃げられたー」って。自分も焦ってしまい押せなく、隣に頼んだ。
すぐに看護師さんが駆けつけたが、だんだんと意識が落ちていた。
アンビューバックでベッドごと運び出された。
僕はずーーと、ドクドクなっていた。しきりに部屋の人に、「大丈夫かな?」「帰ってくるかな」って悲しくなって聞いていた。
「帰ってくるサー」

夜8時くらいまで誰もこなかった。
遠くから、「Aのばあちゃん呼んでー」っと看護師さんの声が聞こえた。
しばらくして、先生が、何もいわずに、部屋にはいってきた。ベッドのないそのスペースの棚をしばらく、眺めた後。
軽くおじぎをしていた。
遠くから、「カシャンカシャン」と、音が聞こえた。病棟の入り口の自動ドアの段差で、ストレッチャーが弾んだ音だ。
横になった僕のベッドから、遠くに、ストレッチャーにのった、タオルがみえた。
翌日、先に車いすにのった、同室の人に聞いてみた。
「どう?」「いなかった。。」
運ばれていった部屋には、誰にもいなかったようだ。
過ぎるのが早く、一瞬だ。泣いてもいられなかった。

その後、社長というあだ名でしばらく呼んでいた。名前で呼ぶとつらくなるからだ。
「ゲームやったり、すぐ泣いてたよねー」と友達と話した。

僕の目の前の空いたままの空間。しばらくの間辛かった。。

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