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コレスペハローワーク番外編「スポーツとは人生そのもの」

コレスペハローワーク番外編では、裏方の先生にスポットをあて、支援とは何かをインタビューします。
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皆さんは日頃どんなスポーツを楽しんでいますか?
通常校から八雲養護学校へ転校してくる生徒の多くは、体育の授業でも点数係や審判の役割のみで、実際にスポーツをした経験が少ないようです。しかし、僕らもスポーツを楽しみたい思いは同じなんです。最近八雲病院で盛んなのが、直径10センチほどの玉を追いかけるフロアホッケー。この競技に、もっとそれぞれが活躍できる要素を取り入れられないか?養護学校の野本先生の挑戦が始まりました!
■ローボールとは?
「これまでのフロアホッケーは、一つのボールにみんなが群がるばかりだったよね。そこで、ポジション制を取り入れて、それぞれの動ける範囲を制限し、チームで協力して試合を進められる工夫をしました。」
1チームは4人編成。
・攻撃を担当するフォワード(FW)は相手の陣地を動く。→1名
・守備を担当するのがディフェンス(DF)。攻めてきた相手から自陣を守る。→2名
・攻撃と守備の両方を兼ね備えたポジションがリベロ(LO)。相手と自分の陣地を自由 に移動できる。→1名
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「ローボールの最大の特徴が、この各ポジションの動ける範囲が決まっているところ。ちなみに、「ローボール」のネーミングは、ゴールの形状が籠(かご:ろう)状からつけました。」
■ローボールをつくろうと思ったきっかけは?
「一つは車いすで楽しめるスポーツが少ないこと。もっと車いすで楽しめる新しい競技があったらいいなと思ったのがきっかけ。そして、攻撃が苦手だけど守備が上手い人、守備が苦手だけど攻撃が得意な人と、普段のみんなの様子をみていて前からいろんなタイプがあるんだなって感じていたんだ。そこで、各自のプレースタイルを活かしながら、ポジションによって活動する範囲が決められているスポーツだったら、どうだろうと考えたんだよね。」
■ローボールを行った際の手応えはありましたか?
「最初は正直、生徒のウケがよくないようだったら2~3回やって止めようと思っていたんだ。でも、蓋を開けてみるとびっくり!実際、それまであまり活躍できていなかった生徒にも、ちゃんと見せ場がある!それまでのフロアホッケーでは、沢山の人がボールを追い回すので、ボールがなかなか動かなく、試合にも変化がなかったよね。それが、ボールが動くので、見ていて面白い。プロ野球やプロサッカーの観戦のように、みせる競技になったと思うよ。なにより、みんなの良さが発揮出来ることが良いよね。」
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■ローボールを創って先生の心境の変化はありましたか?
「今回、初めて0からスポーツの競技を考えたんだよね。ずっと考えにはあったんだけど、これまでのみんなとの取り組みがあったから形になったんだと思うよ。まさに4年間の集大成・・結晶だね。ニーズを形にしていく力。そう言うことに改めて気付かされかな。スポーツってのはホントに工夫しだいで色んなモノを生み出せるね!」
■これからの車いすスポーツについてどう思いますか?
「それでも、まだまだ車いすで楽しめるスポーツは少ないよね。だからどんどん自由な発想をして貰ってみんなと一緒に創っていきたい。八雲でやっていることを全国に広めて、いずれは全国大会とか世界大会などが出来ればいいよね。そしていつか車いすスポーツという垣根が外れて、誰もが楽しめるスポーツの一つになればいいと思う。スポーツをするのに必要な道具が『車いす』という風に。そうなれば、スポーツとして健常者・障害者の区別が無く、みんなで出来る可能性があるんだ。ローボールはそういう可能性を秘めてる競技だと思うよ。」
■最後に、先生にとってスポーツとは!?
「『本能かな。。身体が自然に欲する欲求であり、人間が本来持ってる楽しみの一つだと思うよ。そしてスポーツとは人生そのもの!!』
 スポーツには他人と競ったり、自分と競うものがあるんだ。他人と競うスポーツは突き詰めれば勝つか負けるかしかない。『勝つためにはどうすればいいのか』と考えていくと物事の考え方、思考がシンプルになるんだよね。それはスポーツ以外の色んな事に応用できる。自分の考え方の基本になってるんだよね。悩んだときこそシンプルに考える。そうすると意外と、『自分が今何をすべきかという答えが』が見えてくるんだ。
 また自分と競うスポーツは自己鍛錬にもなる。例えば自分にとってはマラソンなんかがそれで、壁を乗り越えたときの充実感や、自分に勝ったときの達成感とかが、自己鍛錬に繋がると思うんだ。スポーツをやってきて、スポーツから学んで来たことは多い。『だからスポーツとは人生そのものなのさ!!』」
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■編集後記
 今回は、ローボールについてのインタビューでしたが、車いすスポーツ、健常者と障害者など、色々な視点があることを、気づかせてくれる良い機会を貰いました。
 僕もローボールをプレーしていますが、作戦一つで勝敗が左右します。個人の車いすの特性、プレースタイル(攻撃的・守備的)、性格(凶暴・憶病)も需要な要素です。このような多くの視点で勝利を目指すために知恵を絞るローボールは凄く面白い!これが野本先生のいう『勝つための視点』なんだと感じました。
 僕は、八雲に来る前まで車いすスポーツの経験がなかったのですが、やっぱりこういう楽しい競技は、全国の何処でも行われるべきだと思います。大切なのは、八雲でやっている車いすスポーツを全国に広めることと、もっと楽しいスポーツを創ることだと思います。
野本先生、ありがとうございました!

by よなっち